概要

本版では、監査委員会リーダーシップ・フォーラム (Audit Committee Leadership Forum) および取締役会リーダーシップ会議 (Board Leadership Conference) (会議のおもな議題は人工知能 – AI、地政学的リスク、信頼性および人材) で得られた見解を提示しています。株主総会シーズンにおける最近の動向や、株主総会時期以外の期間での積極的な取り組み、さらに約600名の米国民間企業の取締役 (特に、民間企業のCEOのアドバイザーや相談役としてもっとも重要と考えられる独立取締役) を対象におこなった2023年調査に基づく知見についても考察しています。

また、KPMGのBoard Leadership Centerと全米取締役協会 (NACD) が共同で作成したレポート、「監査委員会のブループリント (Audit Committee Blueprint)」の重要なポイントも本版に掲載しています。なおこのレポートは、監査委員会の業務負荷、責任および検討課題に影響を及ぼす社内外のさまざまな要因について詳述しています。最後に、最新の監査委員会調査の注目点を紹介しているほか、新しい物品税や、米国証券取引委員会 (SEC) 、国際サステナビリティ基準審議会 (ISSB) および欧州連合 (EU) から今後提案されるESG報告に関する進捗状況など最新の財務報告および監査の情報について概説しています。

こちらでは、『Audit committee blueprint (監査委員会のブループリント) 』を取り上げ、以下にご紹介します。

監査委員会のブループリント

全米取締役協会 (NACD) における「米国企業の取締役会の未来 (Future of the American Board)」の取組みの一環として、KPMGのAudit Committee InstituteやBoard Leadership CenterおよびNACDはワーキンググループを招集し、監査委員会において何が変化したのか、また今後何が変化するのかについて確認しました。監査委員会の業務、責任、検討課題および時間には、社内外のさまざまな要因がもっとも大きな影響を与えています。

監査委員会の中核的な役割は財務報告、関連する内部統制および開示の監督、ならびに監査人の監視であり、この役割は基本的に変化していません。しかし、報告そのものに関して変化が生じているため、監査委員会はESGの課題、サイバーセキュリティ、人工知能 (AI) および地政学的リスクなどさまざまな分野の状況を把握しなければなりません。同時に、事業やリスクの状況がより複雑化し不確実性が高まっていることで、リスクが高まり、監査委員会の業務負荷が増しています。

レポート「米国企業の取締役会の未来 (Future of the American Board)」は、監査委員会がフォーカスすべき10の重点分野を示しており、すべての監査委員会がその実効性を再評価し、将来に向けて位置づけることができるようになっています。

01 財務報告および関連の専門知識:財務報告と関連する内部統制リスクに関して従来通り重点的に取り組むことがもっとも重要な業務であり、職務が変化し続けるなかで、監査委員会のメンバーが職務に欠かせない一定の財務リテラシーと専門知識を持ち、また保持できるようにする。

02 リスクの監視:継続して評価するポイントは、監査委員会に割り当てられたリスク監視責任の範囲(中核的な監視責任以外のものを含む)が合理的であるのか、監査委員会が各リスク分野を監視する適切な常設委員会であるのか、重要なリスク間の潜在的な相互関連性が評価されているのか、についてである。

03 ESGリスクと開示:変化する規制を考慮しながら、企業の気候変動やその他のESGリスク(特にESG/サステナビリティレポートおよび開示情報の範囲と品質)の監視における監査委員会の役割を明確にする。

04 組織の財務部門の人材:財務部門におけるリーダーシップと人材に焦点を当て、財務部門が、変化している企業の報告の現状や組織のITのニーズに合った人材とスキルセットを持ち合わせているのかについて注目する。

05 監査の品質:監査品質の重要性を強調し、社外監査人と率直でオープンなコミュニケーションを頻繁におこなうという明確な目標を設定する。

06 内部監査の価値:内部監査では、企業における重要なリスク(財務報告やコンプライアンスに加えて、新たに出現するリスクを含む)に焦点を当て、監査委員会にとって内部監査が貴重なリソースとなるようにする。

07 透明性:社内および外部の両面で、取締役会/監査委員会、経営者ならびに内部監査人および外部監査人に透明性を強く求める。

08 コンプライアンスと文化:単に結果ではなく注意すべき点や行動に注目し、特に財務部門や財務報告部門における経営陣の姿勢および組織文化を注意深くモニタリングする。

09 重要な連携:文化、存在意義、戦略、目標、リスクコンプライアンス、統制、インセンティブ、パフォーマンス指標および人材に関して、組織全体で重要な連携を維持する。

10 監査委員会の焦点および実効性:監査委員会が共有できる時間を最大限に活用する。実効性には効率性と事前準備が必要となる。

 

詳細については、下記リンクより英語全文をダウンロードしてください。

本稿に関するご質問はKPMGの貴社担当チーム、あるいはUS Japanese Practice までご連絡ください。

この文書はKPMG Board Leadership Centerが発行したDirector's Quarterly: July 2023 をベースに作成したものです。翻訳と英語原文間に齟齬がある場合は、当該英語原文が優先するものとします。

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